共同作業
己の実行した行動が理解出来ず、発生した思考プロセスの混乱を処理しているうちに、あいつが意識を取り戻して
しまった。
「･･･作戦、あったんだね？」
二、三度目をしばたかせ、爆風で吹き飛ばされたというのに些かも動じず私を見上げ、相変わらずの間が抜けたよ
うな暢気な口調で言ってのけた後、足に付着している黒焦げの物体に気が付き、引き剥がした。
暫くそれをじっと観察した後、それが何なのかを理解したらしく露骨に嫌悪の表情をして、奴に向けて投げつけた。
黒い粉末状になって手に付着した偽装皮膚組織を、私の衣類に擦り付けている。
「無策だとでも思っていたのか？ お前でもあるまいに。」
「･･･あ、でもまだ動いてるよ？」
奴は衝撃によって姿勢制御が乱れているらしく、ぐらぐらと体を揺らして不安定に立ち上がる。
耐久性から見て、此処までは想定内だ。
私は飛びかかり、機動力の損なわれた奴を地面に押さえ付け、激しい燃焼による炭化で耐久性が著しく低下して
いる胸の偽装皮膚を毟り取り、その下の金属板をこじ開け、中枢部を剥き出しにした。
「お、女の人の胸を剥き出しに！？」
意味不明な発言は無視することにして、動力部から延びるケーブルの切断を試みる。
しかし、破損した状態で無理にプラズマを放った影響か、腕部の損傷は予想よりも激しく、出力不足で引き千切る
事が出来ない。
生憎と刃物の持ち合わせは無く、私の腕は、奴のようにブレードへと変化させる事は出来ない。
「それ、手伝おっか？」
背後から作業を傍観していたあいつが前に回り、ケーブルに手をかける。
強靭なケーブルは、いとも簡単に素手で引き千切られていった。
じたばたともがいていた奴の機体が、次第に動かなくなってゆく。
「これでいい？」
「それでいい。これでボディへのエネルギー供給は絶たれた。」
「この残りの一本は？ 切らなくていいの？」
「これは頭部への供給ケーブルだ。無論、残しておく理由が無くなれば切断する。だが今は、目撃される前に此処
を離れた方が賢明だ。」
「そだね、逃げないと。爆発したし、警察とかに通報されちゃってるかも。」
「お前は先に住居へ戻れ。この機体の処分は私が実行する。」
「一人じゃ無理だよ。足、怪我してるでしょ？」
「大丈夫だ。お前が心配する必要性など無い。」
「またそんなこと言って。さっきも、大丈夫だーって言って、危なかったじゃない。」
「お前には関係の無い事だろう。」
「関係あるよ。十分。」
「･･･何をしている。」
「足、このままじゃ、もげちゃうでしょ？ とりあえず、このケーブルで縛っておけばいいよね？」
「応急処置にすらならないが、欠落する事は回避できるだろう。」
「よし、じゃあ、いこっか。」
「･･･勝手にしろ。」
「うん。勝手についてく。」
次
前
戻
