足跡!追跡!

「おい。」
「なあに?」
「何故、私を追跡する。」
「どこに住んでるの? 教えてよ。」
「何故、私の拠点を教えなければならない。」
「教えてくれなくたっていいよ。勝手に付いてくから。」
「ストーキング行為は犯罪ではないのか。」
「殺人だって犯罪だよ?」



 

「着いた。」
「ここ?」
「そうだ。」
「橋の下だよ?」
「何か問題があるのか。」
「家はないの?」
「あれが拠点だ。」
「あれはダンボールだよ?」
「だが、街の中にはあれを家と呼ぶ人間が大勢いた。」
「お金無いの?」
「アルバイトは始めたばかりだ。まだ給金は出ていない。」
「そっか。」
「そうだ。」



いわゆるひとつの草食系

「ご飯とかはどうしてるの? 食べないの?」
「基本的に活動エネルギーの補給は必要としないが、銃のエネルギー補充の為、炭素を摂取する必要がある。」
「へー、じゃあいつも何食べてるの? コンビニの期限切れのお弁当とか?」
「炭素なら何でもいい。」
「うわ。」
「何だ、その反応は。」
「いきなり目の前でヤギみたいにもしゃもしゃ草食べ出したら、誰だってこんな反応するよ。」
「そうか。」
「おいしいの?」
「疑似味覚センサーは搭載されているが、味覚的な充足を得る必要性は存在しない。」
「だからってそれはないと思うよ。」
「そうか。」
「そうだよ。」



住所不定、不逞

「ねえ。」
「なんだ。」
「うちに来ない?」
「それはお前の住居を訪問しろと言う意味か?」
「違うよ。」
「ならば、お前の住居で生活しろと言う意味か?」
「うん・・・まあ、そうかな。」
「何故だ。」
「道草食ってる住所不定のフリーターに殺されるのは、ちょっとやだ。」
「殺害されることに問題がないなら今すぐ殺してやる。」
「それもやだけど。」
「自分を殺そうとする存在を住居に招きあげるなど、常軌を逸している。」
「だよね。」
「しかもその上死ぬ気がないときている。」
「うん。ないね。」
「何故だ。」
「さあ。」
「自分でも理解不能な行動を実行するのか。」
「多分そうだよ。」
「不可解だ。」
「でも、そんなわたしを殺すためにわざわざ未来から送られてきたんでしょ?」
「そうだ。」
「何でだろうね。」
「私はその疑問に対する回答を持ち得ていない。」
「それはこの前聞いた。」
「そうか。」
「で、来るの? 来ないの?」
「暫く思考する。」
「そっか。」



駅から徒歩15分

「で、結局来たんだ?」
「お前の住居に潜伏、行動を把握すれば、お前の殺害も容易だろうと判断した。」
「場所知ってたんだね。」
「お前の住居は把握していた。」
「じゃあなんで今まで殺しに来なかったの?」
「下手に行動してお前が抵抗すれば、ほぼ確実にこの老朽化が進んだ家屋が倒壊するだろう。」
「それは困る。」



ご都合展開

「お前の両親は既に他界しているというデータを得ている。」
「そうだよ。」
「叔父と叔母が後見人だそうだが。」
「そうだね。」
「何故この家にはお前しか生活していない。」
「そりゃあ、叔父さんも叔母さんも別のところに住んでるからだよ?」
「一軒家に年端も行かぬ小娘一人とは・・・余程殺されたいようだな。」
「なんでそういう結論に?」



用心棒/

「本当にそこでいいの?」
「問題無い。」
「いいなら、いいけど。」
「奇襲を仕掛けるには丁度良い立地だ。」
「でも納屋だよ?」
「問題無い。潜伏場所に快適さを求める必要性は無い。」
「・・・小さい頃、お仕置きでよくここに閉じこめられたなあ。」
「おい、何をした。扉が開かない。」