2. 大自然、満喫中



「う・・・ん・・・。」

扉の隙間から差し込む光に目を覚ます。

「起キた カ?」

すぐ隣にはやはり蜥蜴が座っていた。右足も痛い。やはり夢ではなかったのか。
痛む足は、折れてはいないようだがどうやらひびが入ってしまっているらしく、明るいところでよくよく見てみればパ
ンパンにはれ上がっている。

蜥蜴の傷は、ほぼ完全に塞がっていた。昨日の今日だというのに、かなりの回復力だ。

この蜥蜴が人を食わないということは、とりあえず解った。
おまけに何故か日本語も通じる。なら、状況を確認しよう。
せめて、ここがどこなのかぐらいは把握したい。

「えーと、ここは、どこなの?」
「オレの、家。」

いや、それはまあ、分かるけれども。

「私は、何でここにいるの?あなたが連れてきたの?」
「森、ヒコーキ、墜ちた。近ク、落ちてた 拾った。」
「わ、私のほかに、誰か、いなかった・・・?」

「・・・落ちて た、オ前だケ。」

そんな。そんな。お父さん、お母さん・・・!!

「お願い!私にその場所を教えて!」

蜥蜴が少し、困った表情をしたように見えた。

「・・・オ前、アレ見ル・・・よク なイ 思ウ。」
「いいから教えて!!お願い!!」

すでに最悪の事態が想像できていたが、それでも、一縷の望みに賭けたかった。
蜥蜴は、きゅるるる、と、困ったような鳴き声を漏らした後、「・・・わカった。」と、一言だけ言い、再び少女を抱えて木
から木へ飛ぶ。

「きゃああああ!? 教えてくれるだけでいいのよぉお!?」
「駄目。足、痛イ。よクなイ。」

器用に脚のカギ爪で樹皮を蹴り、尾で枝や幹につかまり、バランスをとりながら、すごい速さで木々の間を縫ってゆ
く。
2回目だからもう慣れ・・・る訳はない。
胃の内容物を何度も逆流させそうになりながらも、なんとか耐えた。


喉が酸っぱくイガイガしているが、耐えたったら、耐えたのだ。