4. 急接近戦、来る





破損個所修復過程

「不可解だ。」
「何が?」
「現状において、私の頭部は再構成が未だ完了しておらず、偽装皮膚組織の断面と金属骨格が露出した状態
だ。」
「メカメカしてるね。」
「通常ならば、何かしらの反応があって然るべきなのではないか?」
「えーと・・・、絆創膏、要る?」
「不要だ。」
「あ、包帯の方がよかったね。絆創膏じゃ隠れないよね。」
「・・・お前が、一般的な人類とはかけ離れた精神構造をしているというデータを判断材料に組み込むのを忘れてい
た。」
「・・・気にしてほしかったの?」
「いや、気にするな。少々・・・気になっただけだ。」
「・・・?」





未来考察

「ねえ、未来ってさ、どんなとこ?」
「何故お前にそんな情報を与えなければならない。」
「だって、近日中に死んじゃう予定だし。」
「ならば尚更、必要が無い。」
「逆だよ、死んじゃうから、知りたいの。」
「理解不能だ。」
「それくらいは理解してよ。」
「いずれにせよ、未来に関するデータは諸々のデータと共に時空転移の影響で破損している。引き出すことは不可
能だ。」
「・・・タイムマシンが完成してて、人間そっくりのロボットがいるってことはわかってるけど。」
「十分ではないか。」
「でも、そんなのだけじゃ、未来の世界がどんなとこなのか分かんないよ?」
「データが無い以上、これ以上の考察は無意味だ。」
「んー・・・。平和で、人間とロボットが一緒に暮らしてる世界、とかだったらいいな。」
「それは想像と言うよりも、最早願望だ。」
「そうかな。」
「お前が殺されるということは、お前にとって望まざる未来になる可能性の方が高いのではないか。」
「そうだけど、そんな平和な世界だったら、いいかなって。」
「仮にそうだったとしても、その世界から送られてきた存在によって命を絶たれようとしているのだろう。」
「どっちにしても、何か特別な理由があって、わたしはあなたに殺されなきゃならないんでしょ?」
「確証は無いが、恐らく、そうだろう。」
「もしもわたしが、そんな平和な世界にとって邪魔だから殺されるって言うんなら、悪くはないかな。」
「自己犠牲、というやつか。理解しかねる。」
「いいの! そういう命の使い道もあるの!」
「しかし、生命体が最優先すべきは残存性、ひいては自己の生存ではないのか?」

「・・・殺しにきた人にそんなこといわれても。」





急いては元の木阿弥

「ふむ。」
「おはよー・・・手、治ったの?」
「再構成は完了した。これより殺害行動を再開する。」
「あ、ちょっと待って。」
「何だ。どこへ行く。」
「自分の部屋。着替えるから、入ってこないでよね?」
「何故だ。」
「なんでって、これから死ぬのにパジャマ着たままなのはちょっとイヤでしょ。」
「衣服を変更する意味があるのか。」
「あるよ。」
「具体的にはどういった意味が「いいから出てって。」


「・・・時間が掛かり過ぎだ、やはりそんな事を言って逃走するつも「きゃあー!」


「・・・こう言った事例の場合は、謝罪行動をとるべきだというのか。」
「当然です。」
「・・・ドアに挟まれ、再び両腕が破損したのだが・・・。」
「じ・・・自業自得です。」





大根の味噌汁とほうれん草の胡麻和え

「ねえ。」
「なんだ。」
「ご飯食べたりとかしたら、その腕、早く治る?」
「炭素や有機物を摂取することで、疑似皮膚再構成用ナノマシンを活性化させる事は可能だ。」
「つまり、早く治るんだ?」
「治るという表現は適切ではない。正確には再構成と「はい、ごはん。」
「不要だ。」
「何で?」
「摂取せずとも、再構成のみならば現状でも十分に可能だ。」
「でも、早く治った方が早く任務達成できるでしょ? 何で?」
「世話を焼かれる筋合いなどない。」
「殺しにきたのに、遠慮するの?」
「・・・仮に毒を盛ったとしても、毒殺は不可能だぞ。」
「一般家庭にロボットを殺せるような毒があるはずないでしょ。・・・一般家庭以外にならあるのかって聞かれても知
らないけど。」
「それは、そうだが。」


「おかわり、いる?」
「不要だ。」
「んじゃ、ごちそうさまー。」
「うむ。」
「おいしかった?」
「栄養価的に判断するならば、動物性蛋白質が不足している。」
「贅沢は敵なの。」










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