4. Fevered Think's



案の定、博士は風邪を引いた。

「はっぷしゅん!」
『僕は、水温が低い事は確かに忠告しました。』
「うー・・・。」

本日何度めのくしゃみだっただろうか。数値を失念してしまった。
背中に感じる博士の体温がいつもより高く、いつも頼りないくらいに非力なのに、今日は更に弱々しい。
真っ赤な顔で、熱に浮かされている潤んだ瞳は、どこかぼんやりと虚ろだった。
確かに泉の水温が低かったというのは一つの原因だが、博士の疲労が蓄積されていたという事も大きな要因だ。

『だから僕は、早く休息を取って下さいと・・・』
「・・・それ、ロイが言えた台詞かしら?』
『・・・それを、言われると・・・』

それを言うのはずるい、と思ったが、反論は不可能だった。
実質、僕も博士を疲れさせた要因の一つに他ならない。

『ともかく、今日は小休止を多めに取りましょう。出来るだけ安静にしなくては。』
「大丈夫よ・・・いつも通りでも・・・。」
『・・・朝食は、摂取しないのですか?』
「ちょっと、無理。」
『そう、ですか・・・。』
「そんなに心配しなくても、少しくらい食べなくたって、死にはしないわよ。」

何時にも増して力の無い博士を見ていると、僕はなんて脆いものを守っているのかと不安が募る。
段々と体温が上がってきたのか、朝起きた時よりも辛そうだ。
寒気も酷くなったらしく、毛布を頭から被って震えている。
装甲を震わせる震えが、僕の不安を掻き立てる。

大丈夫だ。只の、風邪だ。
何度も何度もそう判断しているのに、何度も何度も確認しなければ、不安になる。










戻る